「夜」「人形」「カボチャ」

夜。おれたちは女部長の部屋に集まっていた。
ゴスロリ趣味のカーテン、その窓辺に並ぶフランス人形、不気味に口を開いているカボチャを模した置物。
電灯はついておらず、蝋燭だけが室内を橙色に照らす。一応、水の入ったバケツも部屋の隅置いてあった。
文学部という名前だけはダイヤモンドのようにお堅い部活だというのに、なぜこんなことになっているというのだろう。
部長は気まぐれな人で、よくよく何度もこのような計画を立てるのだ。
初詣には神社へ。夏には近所の標高1000mの山へ、文化祭が終わればカラオケで打ち上げ会(俺はよく知らない演歌を歌わされた!)、あとなんだかんだ色々エトセトラ。
まあ、部長の部屋は、今現在夜勤の両親が医者なのでそこそこ広く、十二名の高校生が中に入っても、余裕を持って腰を下ろせるほどである。
ちなみに部員の男女比率は推して知るべし。
あとはまあ、食べるや歌うわのちょっとしたどんちゃん騒ぎ。
ふう、とちょっとため息をつく。
と、視界が急に狭まり、頭の回りがぬめぬめとした感触に覆われた。
あはははは、というたぶん八人分ほどの笑い声。
どうやら俺は、本物のカボチャをくりぬいたもの(しかも内側の処理が適当!)をかぶせられたらしい。
髪の毛もぐちゃぐちゃ、シャツの襟も汚れているかもしれない。
それでも、それでも今はまだこのカボチャをかぶって道化になろう。
残り二ヶ月で、俺は受験のため部活を引退するから。せめて今だけは。

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