落ち葉 第十一章

 翌朝公園へ行くと、入り口のところへパトカーが停まっていた。そこにいる男たちの制服は、一種類ではない。片一方は交番や街角でもよく見る警官の制服。そしてもう一方は……思い出せないが、渋い青緑色でむしろ工場かどこかの作業服に印象が近い。

 近づくと、公園の入り口は黄色地に黒文字のテープで封鎖されていた。立ち入り禁止、と読める。少し嫌な予感がした。

「こちらは現在、立ち入り禁止となっておりますので、迂回してもらえないでしょうか」

 まごついている僕を見て、警官が教えてくれた。その顔には少しうんざりしたような表情が見て取れる。そういえば、ランニングやウォーキングでこの公園を通る人も多い。

「僕はこの公園の掃除を市から任されている者なのですが、何かあったのですか?」

 僕の質問にその警官は少し、たじろいだように見えた。

「事件云々についてはまだ公表できません。市の方からそちらに連絡はいってなかったんですね?」

 この警官の口調から職務への忠実さを感じて、何か聞き出すのは無理だと分かった。

「いえ、こちらは何も連絡は受けてないですよ。」

「なるほど? 少し事情を聞かせて貰えませんか?」

 僕は自分の身の上を説明した。自治体が依頼主だけに無駄に賃金の高い仕事なので、少し恥ずかしくなる。人より要領の良いアルバイトをしているというのは明白だった。それを再び自覚することになり、かすかな罪悪感を覚えた。僕は世間でい言うところの税金泥棒なのだろうか。もちろん、話すのは仕事の内容や、市から業者、業者から僕という下請けの構造のことがメインで、時給の話はしなかったが。

 その後、警官に昨日まで異常はなかったのか、などと訊かれる。何でも良いので教えてください、と言う。昨日はやけにペットボトルのゴミが多かったです、と答えた。警官はメモしながらどれくらいの量かとまた訊いてきたので、例のゴミ袋に半分ほどですね、とまた答えた。

 そんなやりとりをしている間にも、僕の横を、警官とは違う制服の人たちがテープを越えて通り抜けていく。質問を終えると警官は今日は帰りなさいということを言った。僕も国家権力を無視してまで掃除がしたいわけではない。仕事のことが気にはなったが、市や清掃業者の方にはこちらから連絡しておきますので、と言われたので帰らざるをえなかった。

 去り際、警官とは違う制服の人は鑑識という奴じゃないだろうか、と気がついた。

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